夕暮れの台所で
夕暮れの台所の窓を開けて
さざ波の音をさせ
てんぷらを揚げている
その私の姿を
前の家の庭から
お豆腐屋につづく脇の道から
そして
いつも子どもを遊ばせにいく
この町を見下ろす丘の上から
私がみつめている
それぞれの場所からの
それぞれの角度で
私の姿は遠のいて
たちまち風景の中の一点になる
私は青い屋根の下に
周りには親しい人々の家
広がる畑
古墳の森
山なみに囲まれたこの町の一隅から
かすかに流れるさざ波の音
ずっとここに暮らすのではない
夕暮れの台所で
夢のような音を聞いている