盗人萩


何を盗んでいったのか
小指ほどの大きさの人の
ぬきあし さしあしの
足跡が
道の両側に
乱れている

実りゆく
秋の山道には
こっそりと
持っていきたいものばかり

ポトンと寝ころんだ
みどりの木の実も
くるくると先を巻いた
白い花弁の一ひらも
藪陰から聞こえる
乾いた水の音も

もう姿は見えない小さな人は
何を持っていったのか

                                          *ヌスビトハギ マメ科 多年草
                                                       秋、盗人の足跡に似た
                                                       二つにくびれた節果をつける。

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