詩便り 6


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梅の花の前で
       
梅の花の前で


梅の花の前で
立ち止まった

たまっていた
涙をぬぐった










   


二月
二月

二月の空に渦巻く風に
夏草の原のざわめきがある

午後の窓の明るさに
木漏れ日ゆれる
季節がひそむ

鳴りやまない
風の音を聞きながら

こころは
端から
緑に染まる








はきだめぎく
 はきだめぎく


伸びきった草をむしっていくと
生ゴミ処理容器のかたわらから
汗ばんだ私の顔を
つつくもの

(歯が生え始めた子は
抱き上げるたび
私の肩をキリリと噛んだ)

生えたばかりの
乳歯のような花びらが
目の前で
あどけなく笑っている





 


山道で
 山道で

ガードレールにはりついて
よけている私のわきを
小型バスは
しずかにしずかにすり抜け
運転手さんは手を上げて
ていねいにあいさつして
通り過ぎていった

曲りくねる山道を

よろけながらいくバスを
呼びとめて
胸の中を
うちあけたかった







  
 


ジョウビタキ
 ジョウビタキ

玄関に飾っておいた赤い実を
食べにきて
家の中に迷い込み
出口をなくし
ガラス戸の下で
うずくまっていたことなど
もう 知らぬ顔で
前の家のアンテナにとまって
鳴いているジョウビタキ

可憐な嘴から
絹糸の声が
空に散っていく
冬の陽ざしに
まるいいのちが
光っている













ゴンドラ
  
 ゴンドラ

流れる緑の山なみを
木々の梢を
遠く現れる町を
光る川を
見せてくれる

何も言わずに
何も聞かずに
疲れた体ごと
こころごと
持ち上げ
生命の源に
連れて行ってくれる













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