セグロセキレイ

川岸の 地層の奥に
春の陽が射し込んできて
岩になって眠っていた
私たち二羽
夢の日々を思い出して 甦り
光の中へ飛び出した

永い眠りから覚めた私たちの目に
きらめく川面
舞い降りては止まった 白く乾いた石
足跡をつけて歩き回った水際の砂地
羽を煽って吹いてゆく快い風

鳴き声を響かせて飛び回る胸に
さざなみのようによせてくる
こころ弾ませた水辺の記憶
痛みも絶え間なく訪れていたはずなのに   

はるかな時が
明るくたたずむ川原に
幻のように橋はかかり
今を生きる誰かが
うっすらと渡っていく

もう戻らなければ
浅い流れに洗われている川岸の
美しく傾いた地層が
私たちを待っている
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