蝶 |
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片腕の痛みに 布団の中で体をこわばらせていると まだやりとげなくてはならないことや さまざまな不安が集まってきて 昔の傷あとも痛みだしてくる 眠れないまま目を閉じていると 横たわった体の下から透け出るように 暗闇の中に大きく 一頭のクジャクチョウが 浮かびあがった |
夏の高原で見た蝶 鳥に襲われたのか 四枚の翅の先が千切れたり 翅脈だけになっていて 鮮やかなはずの 朱色や水色の模様は消えかかっていた それでも気強く 花から花へ飛び移り 蜂や虻や他の蝶とぶつかりあいながら 蜜を吸っていた |
不安なこころが呼び寄せるたび 姿を現してくれる蝶 力の限り 傷ついた姿そのままで ゆっくりと 羽ばたいてみせる |