冬桜


淡く咲いた冬桜が
山を覆う公園の
大きな石に足をかけ
登りたがっている坊や
若いお父さんとお母さんが
かけよってくる

池のほとりのベンチに
背中を並べている家族の間には
おだんごのお皿が置かれて

近づいてくる笑い声は
少年と少女のカップル

連れ立って遊ぶ人々に混じり
風にふるえる花を見ながら
歩いていく

歩きながら
確かめる胸の中
濃くもならず
淡くもならない
桜色ほどの悲しみが
わずかにゆれる

幼い人も
少年も少女も
和やかにすれちがう人々も
誰もがみな道の途中

道の途中で
胸に落とした悲しみや
忘れた悲しみも
今日一日
冬の桜にあたためられて
日がかげれば
それぞれの道を
帰っていく
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