シンジュサン


朝露が残る山すその道

草の葉の上に落ちていた

一枚の蛾の翅

土の色の濃淡で描かれた

模様をたどれば

蛇の横顔が見えてくる



翅を落として

草の中に息絶えているのか

捕食されたのか

まだ出会ったことのない蛾

四枚の翅を開けば

掌ほどの大きさになり

両側の翅に現れる

左右を向いた二頭の蛇の姿

うねる体のうろこ模様も明らかに



襲うものから逃れ

生き抜き 命を繋ぐ

永劫の願いを浮き立たせて

この夏のひとときをはばたいた蛾

新たな命は残せたのか



叢からつづく森は

シンジュ エノキ クヌギ クサギ

繋いだ命を育む樹々が

眩しい光を放って

ざわめいている
    
























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