バラ色の鳥


その鳥たちに初めて会ったのは
丘の上の農道
萩の茂みで
無心に実を啄ばんでいた
枝先にぶら下がり 首を伸ばし
地面に落ちた実も歩きながら啄ばみ
近づいても気にすることなく
ひたすら食べていた
赤みの強い鳥やわずかに赤い鳥

帰宅して図鑑を見ると
それは北の国から越冬のために渡ってきた
オオマシコ
冬の山でまれにしか見られない鳥だが
今年は山に餌がないのか
里までやってきたらしい
長い距離を移動してきた鳥と
私のささやかな一日の道すじとが
今日この空の下で出合った

十羽ほどの群れは
それから毎日萩の実を食べ
土手の青草の中を啄ばみ
通りかかると
そばのアカメガシワの木や 桑の木や
畑の柵などに飛び移った
時折姿が見えなくても
次の日にはか細い鳴き声と共に姿を見せた

濃いバラ色で
額と喉が銀白色に飾られているのは
雄の成鳥
赤みが少なく優しい顔をしたのは雌
若鳥たちも混じっている

冬がおわるころ
見かけなくなっていた群れが
揃って高い木に止まっていた

どこからかこの地をみつけ
雄は家族を気づかい 一冬を過ごし
帰っていく道のりに
思いを馳せているのだろうか
雌もきっとこころをくだき
家族を支えてきたのだろう
若鳥は親に従い
生きる術を学んだろうか

バラ色に冴える雄の姿
羽が風に小刻みに揺れている
もう「行こう」と言うのだろう
雌も 若鳥たちも そのとき
こころを決めるのだろう

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